iTやコンテンツの法律・知財問題を解決するリーガルサービス提供を重視しています

音楽教室とJASRACの間の音楽教室での演奏に演奏権が及ぶか、という訴訟について、第一審判決が下されました。

訴訟で問題とされている行為の類型

この訴訟で問題となっているのは、音楽演奏の練習のための以下の態様の演奏ということです。

教室レッスン

1対1(個人レッスン)から1対10(グループレッスン)の教師と生徒の演奏。

CDの再生

CDあるいはマイナスワン音源の再生を行うもの。

自宅レッスン

生徒の居宅で、教師と生徒の1対1のレッスンを行うもの。

主要な争点

本件の主要な争点は、演奏の主体、生徒の公衆該当性、聞かせることを目的とした演奏該当性などです。演奏の主体と、生徒の公衆該当性は、音楽教室の演奏が公衆に対するものか、という争点の中で併せて検討されています。

演奏主体

演奏主体は、実際に物理的に演奏をしている生徒や教師に決まっているだろうと思われるかもしれません。しかし、著作権法の世界では、必ずしも物理的な演奏主体(実際に演奏している人)を法律上も演奏主体とするわけではなく、規範的に、つまり、様々な状況から、演奏主体を実際に演奏している以外の者と評価する場合があります。本件でも、生徒や教師が演奏主体なのか、音楽教室が演奏主体なのかが争われました。結論から言うと、裁判所は物理的な演奏者ではなく、音楽教室を演奏の主体と評価しています。

生徒の居宅レッスン

生徒の居宅のレッスンについても音楽教室を演奏主体としており、その論拠として、課題曲の選定と、そして音楽教室の教師も演奏していることを挙げています(一審判決書58ページ)。

生徒の公衆該当性

演奏主体が音楽教室としても、生徒自身が公衆に該当するか、という点も争点となっています。この点は、生徒がレッスンを申し込む時点で、音楽教室と生徒の間に個人的な結合関係があったかを判断するべきとしています。そして、生徒は不特定であるとしています。この点だけで生徒は公衆と評価できます。

しかし、これに加えて裁判例は、教室における演奏の一時点だけでなく、一定期間という視点で見れば生徒は音楽教室から捉えて多数にも当たると判断しています。そのうえで、不特定多数として、生徒を公衆に当たると判断しています。

聞かせることを目的とした演奏

さらに本件独自の争点として、音楽教室の演奏は聞かせることを目的とした演奏か否かが争われています。この点も裁判例は肯定しています。

この点は教師の演奏やCDの再生、グループレッスンなどの他の生徒の演奏、生徒自身の演奏に分けて考えられますが裁判例はいずれも肯定しています。

この点、音楽教室は聞かせることを目的とした演奏とは、音楽著作物の価値を享受させるための演奏をいうものと反論していましたが、裁判例はこの主張を排斥しました。

そのうえで、聞かせることを目的とするとは外形的客観的に公衆に聞かせる目的意思が存在するかどうかで決するとして、これを肯定しました。

一審判決を受けての聞かせることを目的とした演奏の点に関する言及

TOP