iTやコンテンツの法律/知財問題を重視する弁護士です

コンテンツとお金(資金)

コンテンツ事業も資金がなければ開始できません。

コンテンツマーケティングなど、コンテンツを既存のビジネスの集客(カスタマーアトラクション)やブランディング用途で行う場合、既存事業で得た収益が資金となるでしょう。

海賊業で得た収益でサイトをつくるぜ!

また、ウェブサイトなど安価に配信できるメディアが発達している現在では準備できる資金の範囲でコンテンツを制作配信することも可能です。

絵の具があればなんだってつくれるよ!

しかし、アニメや映画など一定の資金が必要になる大規模コンテンツは、その資金を準備する必要が出てきます。

このコンテンツのための資金調達を巡り、将来の紛争を防ぐためにも資金拠出者やコンテンツ事業者の間で、将来の利益配分や出資比率などを取り決め、書面にしておく必要があります。

コンテンツの将来も見据えた、戦略的な取り決めが理想的です!

コンテンツファンディングの法的スキーム

製作委員会方式

日本においてよく利用されている契約方式です。出資者が組合契約(任意組合・匿名組合など)を結びます。利益の配分についても取り決めるため本来的に金融商品取引法の対象となりますが、立法的に規制外とされています。金融商品取引法の規制を受けないためにも法令の要求にしたがった合意を形成する必要があります。詳しくはお問い合わせください。

製作員会方式は近年多くみられるエンターテイメントコンテンツ製作のためのスキームです。
法的には,民法上の組合契約が締結されることが一般的です。

複数の企業が出資者となり、出資者が複数であるという限りでリスクが分担されますが、負債を負った場合の責任は無限責任であり、負債は出資者がすべて返済する義務を負います。

組合契約は、当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することで成立します(民法667条1項)。

出資した財産を含めて、組合の財産は、総組合員の共有とされます(民法668条)。もっとも、組合を清算するまで組合財産の分割を請求することが出来ない(民法676条2項)など、制限も存在します。

組合は法人格を有しませんが、訴訟の当事者となることは認められると解されています(民事訴訟法29条)。

組合は、契約なので成立が容易であり、事業の成功などとともに終了する(民法682条)ため、清算も簡易です。

反面、組合員が無限責任を負うことや、法人格がないため各組合員で権利・財産が共有されることなど、問題点もあります。

組合以外の法的な構成として考えられるもの

特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)、有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律第2条、同3条)、投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律)等信託契約、会社法に基づく株式会社等の設立、その他。

よお、オレとお前で金を出してコンテンツをつくろうぜ!

いいけど、おれは出資は1%で取り分は99%だぞう~

ばか、それはオレだよ!

ばばっぶぶぶうう(これは合意はむりだぞ!)!

民法上の組合契約

コンテンツのためのファンディング(資金調達)において、広く利用されているのが、製作委員会方式です。製作委員会方式は,法的には民法上の任意組合であることが多いと考えられています。もっとも,商法上の匿名組合(商法535条~),有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律2条)など,民法上の任意組合から一歩進めて,出資財産を営業者に帰属させたり,組合員の責任を有限としたりすることなども考えられます。民法上の任意組合契約のメリットは税制上のパススルー課税であったり,組成が簡易な点であったりします。反面、デメリットとしては、法人格が付与されない(権利の一元化が困難であること)があげられます。

有限責任事業組合(LLP)

主として,民法上の任意組合契約における組合員の無限責任というデメリットをクリアするために使われる事業体です。有限責任事業組合契約に関する法律に法的根拠が求められ,同法による規律を受けます。

匿名組合契約

商法に根拠がある組合契約で,民法上の任意組合契約とは大きく性質を異にします。営業者が1人定められ,組合契約は営業者と出資者の個別契約とされます。したがって,出資者には脱退という概念がなく,認められているのは契約の解除権になります(商法540条)。出資者は営業からは分離され,営業上の権利義務を負担しないことになります(商法536条4項)。

特定目的会社(TMK)

次に,著作権などの権利の一元化のために,営業を行う主体に法人格を持たせることが考えられます。特に一つのコンテンツ事業に特化した法人格を付与するときに設立を考慮されるべき一つのスキームが特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)です。特定目的会社(TMK)は,特別目的事業体(SPV)及び特別目的事業体に包含される概念である特別目的会社(SPC)の一形態で,コンテンツファンディングにおいては,一のコンテンツ事業を営むという特定の目的達成のために設立されることになります。パススルー課税は原則的に適用されませんが税制上の優遇措置があります。

合同会社(LLC)

LLPと起源を一にしますが,法人格が付与され反面パススルー課税により2重課税を防ぐことは原則的にできません。株式会社よりは組成コストが低く設立は容易ですが,法人格を得ることは可能です。反面導入されて新しい制度であり事業体として株式会社ほど社会的信用を得られていないのが現状です。

株式会社

もっとも広く利用されている会社組織で、会社法にその設立の根拠規定があります。特定のコンテンツ事業のために株式会社が設立されるケースも少ないながら見られます。

売買予約乃至は停止条件付き売買契約

小規模な事業者や個人クリエイターが購買型のクラウドファンディングなどでコンテンツ事業の資金を調達する場合,事業者個人と出資者を規律する法律構成として検討することが出来るスキームです。一定額の出資が集まることを条件に,既出の出資を寄託乃至貸借とし,出資が一定額に達した段階でクリエイター乃至事業者から売買を完結する意思を表示(民法556条1項)するか或いは,停止条件の成就により売買契約が成立(民法127条1項)するという構成です。事業者やクリエイターは需要が一定程度あることを確認したうえで、代金の前払いを受けることができます。

出資契約

返還合意のない資金の出資を契約します。

まず魅力のあるコンテンツの青写真が必要ですね。

会社・法人設立

出資の一形態ともいえますが、コンテンツのために会社法人を設立し資金を会社に帰属させます。

株式、合同、合資、会社も色々じゃなー。

消費貸借契約

銀行融資など、コンテンツの製作資金を借り入れによって調達します。

コンテンツがうまくお金にならないと借金だけ残るリスクを負い兼ねません!

クラウドファンディング

世間一般から資金を調達するインターネット時代の新しいスキームです。

みんながお金を出してくれるんだって!

クラウドファンディングは、インターネット等をとおした不特定多数の個人からのファンディング(=資金調達)を指します。

資金を投資、出資した人への見返りがない寄付に近い形のものや、金銭的見返りを吸引力にする投資型のクラウドファンディング、グッズや特典を見返りにする購入・販売に近い形態のファンディングなど、その方法は様々です。

また、エンターテイメントコンテンツに関わらず、さまざまな分野で利用が期待される、近年注目が高まっているファンディング(=資金調達)と言えます。

映画、アニメなどエンターテイメント・コンテンツに対する資金調達は、製作委員会方式など、企業が出資する形態が主でした。しかし、近年のインターネットの急速な普及によって、不特定個人からの資金調達も、不可能とまでは言えなくなってきました。

当事務所は弁護士ですので、エンターテイメントコンテンツをクラウドファンディングで実現しようとする個人・事業主を法的な側面からサポートしていくことになります。

1 資金調達の主体・出資関係の法的スキーム
個人から資金提供を受ける母体・出資者との関係を法的にどのように構成するかの問題がまず重要です。クリエイター個人が出資を募るような場合はクリエイター個人を主体として、個々の出資者と出資に関する契約を結ぶことも考えられます。また、クリエイター個人と出資者の間で組合契約を締結したり、法人を設立して法人に財産を帰属させる方法も考えられます。法人は、株式会社や合同会社など、いくつかの種類が考えられます。その他にも、特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)、有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律第2条、同3条)、投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律)などさまざまな法的スキームが考えられます。

2 対価としてのプレミアムの流動化
クラウドファンディングは、対価のない寄付型でない限り、金銭的見返りや、グッズ・特典など出資者にプレミアムを約束することで資金提供を可能にします。また、寄付型でもなんらかのグッズのプレゼントなどを行うことになるでしょう。プレミアムは法的には資金調達主体が、出資者に負う債務という形で捉えられ、これを証券化(セキュリタイゼーション)して流動化することなどで、流通性を生み出し、出資の促進を図ることも、検討されるべきです。たとえば、資金調達主体として株式会社を設立すれば出資は株式をとおして行われますので株券という形で自然と証券化が行われることになります。

3 コンプライアンス(法令順守)の問題

クラウドファンディングの方法によっては、資金決済に関する法律、金融商品取引法など、種々の法的な規制を受ける場合があります。場合によっては刑事罰の対象となることもあり、法的専門家関与のもと法令を順守していくことが望ましいことは言うまでもありません。

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