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訴えの交換的変更や、請求の趣旨の減縮(後述亜炭コーライト代金請求事件参照)により審理の対象とならない部分が生じる場合、当該部分は訴えの取り下げとなりますので、相手方が本案について準備書面を提出する等していた場合、相手方の同意が必要になります(民事訴訟法261条1項、2項本文)。

具体的には、発信者情報開示請求では、プロバイダの保有している情報によって、訴えを変更する場合や、請求の趣旨を減縮する場合があります。

例えば、氏名、住所、メールアドレスの開示を求めている場合にメールアドレスを保有していないという答弁があった場合、メールアドレスについて請求を取り下げる場合があります。

インターネットにわたしの悪口があったので、発信者情報開示の裁判を起こしました。
でも、プロバイダがメールアドレスを持っていないって・・・

その場合、氏名住所だけに絞って論点を減らすということもあるね!

なるほど!でも同意してくれるかな?

通常同意してくれることが多いよ。

請求の減縮に対する判例の立場

請求の減縮について、昭和27年12月25日最高裁第一小法廷判決(昭24(オ)207号 亜炭コーライト代金請求事件)は、訴えの一部取下げであり訴えの変更に当たらないと判示しています。

したがって、請求の減縮は訴えの変更に関するルールではなく、訴えの取り下げに関するルールに規律されることになります。

氏名・住所・メールアドレスの請求を、氏名・住所に絞るのも、請求の趣旨の減縮になりそうだね

どちらにせよメールアドレスの部分は訴えの一部取り下げだから、相手方の同意が必要になるよ。

請求の減縮は口頭でも可能であり、また、相手方が翻案について準備書面を提出する等した後は、相手方の同意が要件となります(民事訴訟法261条1項、2項本文)。

相手方の同意が得られない場合は、請求を放棄するという選択肢も検討しなければならなくなります。

相手のプロバイダが、メールアドレスの取り下げに同意してくれなかった!

え?

なんか怒らせるようなこと言ったんじゃあ・・・?

昭和27年12月25日最高裁第一小法廷判決(昭24(オ)207号 亜炭コーライト代金請求事件)

 記録によれば本件訴状には請求の趣旨として「被告等(上告人両名及び村上好一郎)は連帯して原告(被上告人)に対し金一三万円に昭和二三年五月一日より判決執行済に至る迄年六分の割合による損害金を支払うべし、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決並に担保を条件とする仮執行の宣言を求める」とある。然し、第一審における第一回口頭弁論期日(昭和二三年九月二二日)において、被上告人(原告)代理人は請求の趣旨として「被告Aは原告に対し金十三万円並に之に対する昭和二三年五月一日以降本件判決執行済に至る迄年六分の割合による損害金を支払うこと、被告Bは原告に対し金六五、〇〇〇円並に之に対する昭和二三年五月一日以降本件判決執行済に至る迄年六分の割合による損害金を支払うこと、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決及担保を条件とする仮執行の宣言を求める」と陳述し且つ訴状に基づいて請求原因を陳述しているから、右は単に請求の趣旨を減縮したものであり、即ち上告人Bに対しては訴の一部の取下に過ぎないのであり、所論の如く民訴二三二条第二項に所謂請求の変更に該らない。しかも右取下は上告人より本案について何等の申述も準備書面の提出もない最初の口頭弁論においてなされたものであるから、その取下については相手方たる上告人の同意を必要としないし、書面によりてすることをも必要としない(民訴二三六条)。論旨は何等理由がない。
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