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コピーライト(著作権)トロールという言葉があります。

この言葉は、いわゆる俗語であり、この言葉には、明確な定義づけはされていないようです。

そこで、このコピーライトトロールの位置づけについて、若干の考察を加えてみました。

パテント(特許)トロール

コピーライトトロールという言葉より先に、パテント(特許)トロールという言葉があり、このパテントトロールの派生語としてコピーライトトロールという言葉が生まれました。

このパテントトロールについても、明確な定義づけはないというのが現状です。

しかしながら、パテントトロールについて、特許庁のワーキンググループが作成した資料が参考になります。

そこでは、パテントトロールについて、「特許権を濫⽤し、イノベーションを阻害する者」という一応の概略的な定義づけが試みられています。

また、パテントトロールについて、以下の諸点を要素として列挙しています。

  • 要素① 特許発明のための研究開発を実施しない
  • 要素② 他者から特許権を取得する
  • 要素③ (a) 不適切なライセンス料を⽬的として権利⾏使を⾏う、⼜は、
  •    (b) 権利⾏使を乱発する
  • 要素④ 製造販売等の事業をしておらず、権利⾏使により得られるライセンス料等を主な収益源とする

WGの定義と要素のコピーライトトロールへの転用

上記パテントトロールに対するワーキンググループの定義づけをコピーライトトロールに転用すると、コピーライトトロールとは概略、「著作権を濫用し、文化の発展を阻害する者」という定義づけになるかと思われます。

なお、文化の発展は、本邦著作権法1条において、著作権法の目的と位置付けられています。

次に、パテントトロールの要素についてコピーライトトロールに転用すると例えば以下のように要素付けすることが出来ると考えられます。

  • 要素① 著作物創作のための創作活動をしない
  • 要素② 他者から著作権を取得する
  • 要素③ (a) 不適切なライセンス料を⽬的として権利⾏使を⾏う、⼜は、
  •    (b) 権利⾏使を乱発する
  • 要素④ 創作販売等の事業をしておらず、権利⾏使により得られるライセンス料等を主な収益源とする

コピーライトトロールの判定

以上の要素を総合的に考察して、「著作権を濫用し、文化の発展を阻害する者」がコピーライトトロールと呼ばれるべきことに、私としても違和感はありません。

上記の4要素などを中心に、総合的に、文化発展にとって阻害者なのか否かが判定されていくべきでしょう。

米国のコピーライトトロール

米国でコピーライトトロールという評価を受けることがあるのが、パーフェクト10です。

パーフェクト10は、米国成人向雑誌の出版社で、オンラインでも成人向コンテンツを配信していましたが、オンライン上の著作権侵害などで積極的に訴訟を提起したことから有名になりました。

特に、パーフェクト10は、Google及びAmazonに対して提起した米国訴訟などで知られることになりました。訴訟自体はサーバーテストとインコーポレーションテストという日本のインターネット上の権利侵害においても重要な視点となり得る2つの判断基準について、採否が検討されるなど重要事例となっています。

https://i2law.con10ts.com/2020/06/06/%e7%b1%b3%e5%9b%bd%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%90%e3%83%bc%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e3%81%a8%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e8%91%97%e4%bd%9c%e6%a8%a9%e6%b3%95/

コピーライトトロール論の懸念点

ただ、ここでひとつ気を付けなければならないのは、金銭を請求すればコピーライトトロールに当たるという様な安易なコピーライト・トロール論で適正な権利管理を阻害するおそれも懸念される点です。

懸念されるのが、コピーライトトロールという揶揄が本当に微妙なさじ加減一つで、創作者への金銭(実際にはお金がもたらす消極的、ないしは積極的な「時間」)の循環サイクルを鈍化させ、今度は「文化の発展」を阻害する方に働きかねないということです。

真のコピーライトトロールが文化の発展を阻害するとともに、安易なコピーライトトロール論も、文化の発展を阻害する懸念があることには注意が必要でしょう。

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