I2練馬斉藤法律事務所

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交通事故の場合の健康保険利用

交通事故の場合も健康保険を利用することが出来ます。但し、第三者行為に基づく被害届を提出しなければなりません。この場合、一次的には医療費の3割は被害者が負担(もっとも現在は加害者加入の任意保険会社が自賠責保険会社に代わって一括の窓口となり医療機関に直接支払うケースが殆どです(一括対応。また、この際に医療機関は任意保険会社に直接診療報酬明細書(レセプト)を送付します。)。また、残りの7割は一次的に健康保険組合等が負担します。しかし、その後健康保険は7割分についても加害者ないし加害者加入の自賠責保険会社、これを超える部分は任意加入損害賠償保険会社に求償します。

これに対して自由診療においては、一次的に被害者が10割を負担し、その後、加害者に損害賠償を請求するのが原則です(もっとも、上記のとおり現在では保険会社が一括対応の窓口となり直接医療機関に支払うケースが殆どです。)。また、自由診療においては医療費の総額が高額になりやすいことは上述のとおりです。

健康保険診療の治療費

 健康保険法施行規則第65条 (第三者の行為による被害の届出)療養の給付に係る事由又は入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給に係る事由が第三者の行為によって生じたものであるときは、被保険者は、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した届書を保険者に提出しなければならない。
一  届出に係る事実
二  第三者の氏名及び住所又は居所(氏名又は住所若しくは居所が明らかでないときは、その旨)
三  被害の状況

交通事故を含んだ第三者行為による受傷の治療も健康保険診療により治療することが可能です。

「 昭和 43 年 10 月 12 日保険発第 106 号・厚生省保険局保険課長国民健康保険課長から各都道府県民生主管部 ( 局 ) 長宛」告示において、「最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい」と述べられています。

このように、第三者行為による怪我についても、状況に応じて健康保険を利用するべき場合があります。

なお、同告示及び「平成28年3月1日保国発0301第1号・都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長通知」において触れられている、国民健康保険法第 64 条第 1 項の規定は、下記の条文のとおりです。

このように、健康保険を適用した場合は、自費負担部分を超える治療費については、損害として発生しているとしても、国民健康保険法64条1項に基づいて保険者に代位取得されることになるため相手方に対して請求することはできないことになります。


国民健康保険法第六十四条
1 市町村及び組合は、給付事由が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付を行つたときは、その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは、当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。次条第一項において同じ。)の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、市町村及び組合は、その価額の限度において、保険給付を行う責を免かれる。
3 市町村及び組合は、第一項の規定により取得した請求権に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会であつて厚生労働省令で定めるものに委託することができる。


健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて

( 昭和 43 年 10 月 12 日保険発第 106 号)
厚生省保険局保険課長国民健康保険課長から各都道府県民生主管部 ( 局 ) 長宛

自動車による保険事故の急増に伴い、健康保険法第 67 条 (現行57条)( 第 69 条ノ 2(現行該当条文なし) において準用する場合を含む。) 又は国民健康保険法第 64 条第 1 項の規定による求償事務が増加している現状にかんがみ、自動車損害賠償保障法の規定に基づく自動車損害賠償責任保険等に対する保険者の求償事務を下記により取扱うこととしたので、今後、この通知によるよう保険者に対し、必要な指導を行われたい。

なお、最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。また、健康保険法施行規則第 52 条又は国民健康保険法施行規則第 32 条の 2 の規定に基づく被保険者からの第三者の行為による被害の届け出を励行されるよう併せて指導されたい。

おって、この取扱いについては、運輸省並びに自動車保険料率算定会及び全国共済農業協同組合連合会と協議済みであり、自動車保険料率算定会及び全国共済農業協同組合連合会から、各保険会社及び各査定事務所並びに各都道府県共済農業協同組合連合会に対して通知が行われることとなっているので、念のため申し添える。

○国民健康保険の個人賠償責任保険に対する求償事務の取扱いについて
(平成28年3月1日)
(保国発0301第1号)
(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)
(公印省略)
自動車による保険事故に伴う国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「国保法」という。)第64条第1項の規定に基づく第三者への損害賠償請求については、「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」(昭和43年10月12日付け保険発第106号保険局保険課長・国民健康保険課長通知)により、保険者と自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に基づく自動車損害賠償責任保険の管轄店等との間に損害賠償額等についての照会及び回答の方途を示している。また、「第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について」(平成27年12月3日付け保国発1203第1号保険局国民健康保険課長通知)により、保険者が求償事務に必要な情報を十分把握することができるよう、照会及び回答の様式を改めてお示ししたところである。
一方、国民健康保険における保険給付の対象であり、かつ、その発生が第三者による不法行為(以下「第三者行為」という。)によるものの中には、加害者である第三者が個人賠償責任保険(住宅の管理又は日常生活に起因する事故が生じ、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険をいう。以下「個人賠償責任保険」という。)に加入している場合がある。
そこで、今般、下記のとおり、個人賠償責任保険についても、自動車損害賠償責任保険と同様に、損害賠償額等の照会及び回答の方途を示すので、貴管下保険者及び国民健康保険団体連合会への周知及び指導について特段の御配慮を願いたい。

第1 趣旨
住宅の管理又は日常生活に起因する第三者行為による事故に係る保険事故に関し、保険者が、国保法第64条第1項の規定に基づき、当該第三者に対して有する損害賠償請求権を取得し、国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号。以下「国保法施行規則」という。)第32条の6の規定に基づく被害届(以下「被害届」という。)により当該第三者が個人賠償責任保険に加入していることを把握した場合における、当該保険者と当該個人賠償責任保険の取扱店(以下「取扱店」という。)との間の損害賠償額等についての照会及び回答の方途を示し、保険者の求償事務の円滑な処理を図ることとする。
第2 事務処理の方法
1 市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)及び国民健康保険組合の理事長(以下「市町村長等」という。)は、国民健康保険の保険給付が住宅の管理又は日常生活に起因する第三者行為による事故によって生じたものであると認め、かつ、被害届により、加害者である第三者が個人賠償責任保険に加入していることを把握したときは、当該取扱店に対し、様式1により個人賠償責任保険の保険金の支払状況等について照会する。この場合、当該取扱店からは様式2により当該個人賠償責任保険の損害賠償額、保険金の請求の有無、支払い年月、金額等の回答を得ることとしているが、この回答を得るに際して、被保険者(被害者)から同意を得ていることを証明する様式3を同封する。
なお、照会を行うに当たり、様式2のうち記載が不要な内容があれば、その旨を明示する。(例えば、取扱店と第三者(加害者)が示談交渉中である場合には、見込みであっても過失割合の記載は不要である旨を様式1に付記することなどが考えられる。)
2 市町村長等は、1による回答により、求償可能であると認めた場合(示談代行サービスが利用されていないこと等により取扱店が保険者に対し回答できない場合を除く。)は、損害賠償額の支払いを請求するため、遅滞なく、次に掲げる書類等を取扱店に送付する。
(1) 様式4 個人賠償責任保険(共済)損害賠償額請求書兼口座振込依頼書
(2) 様式5 事故発生状況報告書
(3) 様式6 国民健康保険保険給付内訳書
(4) 保険事故が死亡の場合には、死体検案書又は死亡診断書並びに死亡者の戸籍謄本又は死亡者と受給権者との関係を証するに足りる書面
3 市町村長等は、同一事案について第2回目以降の保険給付を行ったときは、その都度様式6の保険給付内訳書を取扱店に送付する。
4 2及び3の手続きに従って個人賠償責任保険への求償が行われたときは、取扱店は口頭又は書面その他の方法により、応償に関する回答を通知する。
5 様式1から様式6までの各様式は、照会及び回答等を行うに当たり、原則として使用するものとして示すものであるが、各保険者においてこれらと別の様式を使用しても差し支えない。
第3 取扱店からの照会について
第2により個人賠償責任保険への求償を行った際、取扱店から事故発生状況等の取扱店における応償事務上必要な事項について照会を受けた場合には、市町村長等は取扱店に協力し、応償上の便宜を図ること。
第4 取扱店との協議について
市町村長等と取扱店との間に本通知に関して問題が生じた場合には、具体的な事情を明らかにして、厚生労働省保険局国民健康保険課宛て連絡すること。
第5 留意点
本通知の対象は、示談代行サービスが利用されている個人賠償責任保険であり、示談代行サービスが利用されていないものや、事業用の損害賠償責任保険の場合には、損害保険会社等は保険者と直接交渉する権限を有しないため、回答は得られない。
また、当該第三者が負う法律上の損害賠償責任のうち、当該第三者が加入している個人賠償責任保険の補償対象外の部分については、保険者が直接加害者に対して請求できるものであることには何ら変わりがない。
【個人賠償責任保険の補償の対象となる事故の例】
① 自転車の衝突による通行人の負傷
② 飼い犬の噛みつきによる他人の負傷
③ 子どもや重度の認知症患者等の加害行為により親権者や後見人が責任を負う他人の負傷
④ 私有地の工作物や竹木による隣人の負傷
⑤ ゴルフの競技中等による他人の負傷

交通事故と自由診療

自由診療とは、健康保険を適用しない治療、あるいは健康保険が適用できない・されない診療を言います。

本邦では国民健康保険制度などが発達しているため、医療には健康保険を適用するのが通常です。この際、健康保険が適用されない医療などを行う場合は、医療機関と患者等の自由契約となり、医療サービスの内容と対価は契約の合意によって定められることになります。

混合診療の原則禁止

日本国内での「保険診療と保険外診療の併用」を混合診療と言います。混合診療は本邦では原則禁じられていると解釈されています。

平成23年10月25日最高裁判所第三小法廷上告棄却判決(平成22年(行ツ)第19号)…以上に鑑みると、評価療養の要件に該当しない先進医療に係る混合診療においては保険診療相当部分についても保険給付を行うことはできない旨の解釈(混合診療保険給付外の原則)が、法86条の規定の文理のみから直ちに導かれるものとはいい難いものの、同条において評価療養について保険外併用療養費に係る制度が定められたことについては、一つの疾病に対する療養のうち、保険給付の対象とならない自費の支出を要する診療部分(先進医療に相当する診療部分等)のあることを前提として(法86条4項において準用する法85条5項参照)、基本的に保険給付の対象となる診療部分(保険診療相当部分)について金銭支給をすることを想定して設計されたものと解してこそ、被保険者が一部負担金以外には支払を要しない現物給付としての療養の給付に係る制度とは別に、これに含まれない金銭支給としての保険給付である保険外併用療養費に係る制度を設けたことが意味のあるものとなることに加え、前記の制度の趣旨及び目的や健康保険法の法体系全体の整合性等の観点からすれば、上記の解釈が導かれるものと解するのが相当である。すなわち、保険医が特殊な療法又は新しい療法等を行うこと及び所定の医薬品以外の薬物を患者に施用し又は処方すること並びに保険医療機関が被保険者から療養の給付に係る一部負担金の額を超える金額の支払を受けることが原則として禁止される中で、先進医療に係る混合診療については、保険医療における安全性及び有効性を脅かし、患者側に不当な負担を生じさせる医療行為が行われること自体を抑止する趣旨を徹底するとともに、医療の公平性や財源等を含めた健康保険制度全体の運用の在り方を考慮して、保険医療機関等の届出や提供される医療の内容などの評価療養の要件に該当するものとして行われた場合にのみ、上記の各禁止を例外的に解除し、基本的に被保険者の受ける療養全体のうちの保険診療相当部分について実質的に療養の給付と同内容の保険給付を金銭で支給することを想定して、法86条所定の保険外併用療養費に係る制度が創設されたものと解されるのであって、このような制度の趣旨及び目的や法体系全体の整合性等の観点からすれば、法は、先進医療に係る混合診療のうち先進医療が評価療養の要件に該当しないため保険外併用療養費の支給要件を満たさないものに関しては、被保険者の受けた療養全体のうちの保険診療相当部分についても保険給付を一切行わないものとする混合診療保険給付外の原則を採ることを前提として、保険外併用療養費の支給要件や算定方法等に関する法86条等の規定を定めたものというべきであり、規定の文言上その趣旨が必ずしも明瞭に示されているとはいい難い面はあるものの、同条等について上記の原則の趣旨に沿った解釈を導くことができるものということができる。
…以上のとおりであるから、法86条等の規定の解釈として、単独であれば療養の給付に当たる診療(保険診療)となる療法と先進医療であり療養の給付に当たらない診療(自由診療)である療法とを併用する混合診療において、その先進医療が評価療養の要件に該当しないためにその混合診療が保険外併用療養費の支給要件を満たさない場合には、後者の診療部分(自由診療部分)のみならず、前者の診療部分(保険診療相当部分)についても保険給付を行うことはできないものと解するのが相当である。所論の点に関する原審の判断は、是認することができる。論旨は採用することができない。

このように混合診療が原則禁止されることから、患者は健康保険を適用した保険診療か、自由診療かを選択しなければならないことになります。
もっとも、1点10円等と金額が厳格に定められる健康保険に比して、自由診療では規制が原則ないことから、倍以上の料金になることもあります。

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