リツイート事件控訴審判決とコンバイニング(平成28年ネ10101号発信者情報開示請求事件)

概念の整理=リツイート<インラインリンク<コンバイニング

リツイート、インラインリンク、そして、コンバイニング(仮)という概念を最初に整理しておきたいと思います。

※なお、当初エンバディングとしていた技術について、エンバディングという呼び方はフレームリンクと同義の事象を指す言葉として概念整理されている例がある事から、統合とか、合成を意味するコンバイニング(仮)という呼び方に訂正しました。

ここで、インラインリンクとは,ユーザーの操作を介することなく,リンク元のウェブページが立ち上がった時に,自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて,リンク先の画面又はこれを構成するファイルがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいうものとします。

次に、控訴人が同一性保持権や氏名表示権、あるいは控訴審において追加した複製権侵害、公衆送信権侵害、公衆伝達権侵害を主張した土台となる技術は、コンバイニング(仮)(正式な用語法ではありません。)と、控訴人代理人が読んでいる技術です。ここではコンバイニング(仮)とは、文章と画像データを結合したレンダリングデータを生成してクライアントコンピュータのブラウザに表示する技術です。控訴人は、控訴審においては、データの結合と結合データの送信からなるコンバイニング(仮)という技術を中心に著作権、著作者人格権侵害の是非を問うています。なお、コンバイニング(仮)において、データの結合と、データの送信の順序は先後し得、インラインリンクを用いたコンバイニング(仮)では、①データのサーバーからクライアントコンピュータへの送信、②クライアントコンピューターにおけるデータの結合という順序になります。これに対してインラインリンクを用いないコンバイニング(仮)では、①サーバーサイドでのデータの結合、②結合されたデータのサーバーからクライアントコンピューターへの送信となる場合があります。

整理すると、コンバイニング(仮) > インラインリンク > リツイート という関係になろうかと思います。つまり、インラインリンクによるコンバイニング(仮)とインラインリンクによらないコンバイニング(仮)があり、コンバイニング(仮)はインラインリンクを包含したより広い概念になります。さらに、リツイートは、インラインリンクの一形式と言え、さらにいえば、インラインリンクによるコンバイニング(仮)の一例でもあります。

もっとも主張の中でインラインリンクとこれより広いコンバイニング(仮)という概念を明確に区別していたわけではなく、両概念の明確な区別は判決後に事案を整理するために行っています。ただし、実質的な控訴人主張は一審主張はインラインリンクを基礎に、控訴審追加主張はコンバイニング(仮)を基礎に行われており、リツイート事件控訴審判決を読む限り、このコンバイニング(仮)(データの結合行為)の著作者人格権侵害が認められた、と読み替えた方が正確或いは理解がスムーズではないかと感じています。また、そこまで広げないと判例の意図が正確に伝わらない懸念も感じています。

コンバイニング(仮)

コンバイニング(仮)によってテキストと画像データは結合して同時に表示することが出来るようになり、ウェブサイトは雑誌と同等のメディア性を獲得するに至りました。このコンバイニング(仮)は、インラインリンクを用いることが一般的ですが、インラインリンクを用いないことでも実現できるため、本来、インラインリンク、あるいはリンクと必ずしも直接関係のある技術ではないと理解しています。

このコンバイニング(仮)機能をもったNSCAが開発したモザイクというブラウザがリリースされ、今日のインターネットの爆発的な普及の礎となったことは揺るがしようのない歴史的事実です。

なお、モザイクというブラウザを開発したマークアンドリーセン氏のIMGタグというアイディアを思いついた際のコメントはウェブ上に今日でもアーカイブされています。

繰り返しになりますが、このコンバイニング(仮)において、リンクは、課題の解決のために前提手段として、一般的に利用されている技術、というレベルの位置づけに過ぎないことには強い留意が必要です。

こちらの画像をソースで閲覧(CTRL+U)してソースの250行目辺りをご覧頂くと、HTMLに直接画像データが埋め込まれているのが確認できると思います。

実際にも、グーグルの画像検索のソースをみる(リンク先でCTRL+U)と、同じようにHTMLに直接画像データが挿入されているのがご確認頂けると思います。

このように、コンバイニング(仮)においては、HTMLの画像データをHTMLに直接代入して送信することで、サーバーサイドで情報を統一してしまい、クライアントコンピューターサイドで画像取得のためのHTTP通信を省いて画像とテキストを統合して表示するという最重要課題を解決することが可能です。つまり、この場合インラインリンク の定義に該当する事象は介在しません。

この意味で、コンバイニング(仮)においては「リンク」は、画像と文章を同時に表示するという課題解決のために一般的に利用される技術ではありますが、課題解決のためにどうしても利用しなければならない必要不可欠な技術でさえありません。

リツイート事件控訴審で審理されたこと
このように、リツイート事件はリツイートそのものではなく、インラインリンクを審理対象とし、さらに、控訴人側からはインラインリンク(つまりリンクの延長のような事象)ではなく画像と文章の同時表示を目的としたコンバイニング(仮)というデータ結合行為の著作権、著作者人格権侵害が主張され、データ結合行為の主体性が争われた事案である事にはご留意ください。

特に、同一性保持権侵害について問題となったのは、著作物の改変行為であり、さらにいうと、著作物の改変行為の原因となる、データの結合とクライアントコンピューターにおける結合データの表示行為(コンバイニング(仮))です。実際に、知財高裁判決では触れられていませんので知財高裁判決ではあまり重視されなかったのかもしれませんが、控訴人が同一性保持権侵害について援用したのは、ときめきメモリアル事件最高裁判決(最高裁平成13年2月13日第3小法廷判決)です。

知財高裁判例も、著作物の改変主体は誰であるか、という観点にさらに、その前提となる、データを結合したのは誰か、データ結合行為の主体は誰か、という視点を噛ませて審理判断していると理解してます。また、データ結合行為の主体性という視点で事案を考察すると、知財高裁判決も違った見え方をする場合もあるのではないかと思います。

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